第13回ワカサギに学ぶ会参加報告
A meeting report to learn from No.13 japanese-smelt.
fig.01 芦ノ湖 元箱根周辺
fig.01 芦ノ湖(元箱根周辺)
第13回ワカサギに学ぶ会は、 2007年03月14日(水)〜15日(木)、神奈川県・芦ノ湖において開催された。
主催地神奈川県の、芦之湖漁業協同組合橘川宗彦事務局長からのお誘いもあり、牛久沼漁業協同組合からよしさんも出席した。
北は阿寒湖漁協から、西は島根県の水産技術センター迄、参加者68名+ホスト役の箱根町長・神奈川県内水面漁業協同組合連合会会長 と総勢70名が、会場となった小田急山のホテルに集った。

基調講演は、東海大学工藤盛徳名誉教授の『緑の保全とワカサギの増殖について』である。
芦ノ湖は周囲長21km・湖面標高723m、約3000年前に成立した堰き止め湖であるという、さりげないイントロに 重要なキーワードが含まれ、それは後段のワカサギ受精卵の酸素消費量へと続いていた。
ワカサギ受精卵の酸素消費量が、ふ化筒のワカサギ受精卵収容量を決するが、肝心の酸素は給水中の溶存酸素であり、 飽和溶存酸素量は種種の要素に律せられ、そのひとつが湖面標高補正であると説明された。
必要給水量計算にあたっては、彼我の差(立地条件・標高)も考慮されなくてはならないと、 ハイランド芦ノ湖ならではの事例を示して頂いた。
fig.02 東海大学工藤盛徳名誉教授の
『緑の保全とワカサギの増殖について』
fig.02 東海大学工藤盛徳名誉教授の『緑の保全とワカサギの増殖について』

群馬県水産試験場の久下敏宏先生は、『群馬県におけるワカサギ増殖の問題点』を報告された。
群馬県のワカサギ遊漁者は、北海道に次ぐ2位であり、(アユも低調なので)ワカサギに力を入れている。
ワカサギは各年の資源変動量が大きいという問題があり、ワカサギ資源量の高位安定化のため実施し計画中の、 諸策をご紹介頂いた。
例えば、漁場からの放水にともなう仔魚流失の観点から、農業用溜池において放流水中の流失仔魚尾数を概算した調査では、 1日当り約4%が漁場外流失していた等は、少なからず衝撃的事例である。
仔魚の走光性(光に集まる)を利用して排水口から遠ざける技術の開発が必要であろう、と改善方向が示されたことも心強い。
fig.03 群馬県水産試験場久下敏宏先生の
『群馬県におけるワカサギ増殖の問題点』
fig.03 群馬県水産試験場久下敏宏先生の『群馬県におけるワカサギ増殖の問題点』

茨城県内水面水産試験場の冨永 敦さんは、『ワカサギをとりまく魚類の現存量増加と種組成変化』を報告された。
霞ケ浦の定置網の漁獲から、魚種ごとの重量・個体数が解析され、1986年から2004年にかけ、 現存魚総重量はさほど変わらないものの、 ハゼ・テナガエビ等の小型魚類相(単年魚)が減り、コイ・フナ・ニゴイ・外来魚等の大型魚類相(多年魚)が増加傾向であると指摘された。
その上で、ワカサギと餌や生活の場が競合し、ワカサギを捕食する可能性のある魚種に変化があるとの見方を示された。
例えば大型ニゴイが(餌が不足し)ワカサギを捕食していた事例があると。
fig.04 茨城県内水面水産試験場冨永 敦さんの
『ワカサギをとりまく魚類の現存量増加と種組成変化』
fig.04 茨城県内水面水産試験場冨永 敦さんの『ワカサギをとりまく魚類の現存量増加と種組成変化』

茨城県霞ケ浦北浦水産事務所の武士和良さんは、『霞ケ浦北浦海区ワカサギ資源回復計画の内容とその推進状況について』を報告された。
「霞ケ浦北浦海区ワカサギ資源回復計画」(2006年07月11日・茨城県)は、今後5年間に、ワカサギ年間漁獲量を霞ケ浦100トン以上・ 北浦60トン以上で維持し、安定的に供給することを目標としている。
具体的指数に、08月における獲れ具合(1日1隻当りの漁獲量)が設定され、 警戒値(霞ケ浦5kg・北浦10kg)以下なら、以降のワカサギ・しらうおひき網漁獲を控える(獲り残し作戦)としたが、 2006年08月は警戒値を上回っていた。
続く2007年02月のワカサギ産卵期調査では、親魚が湖内に確保されていることが確認された、と説明があった。
fig.05 茨城県霞ケ浦北浦水産事務所武士和良さんの
『霞ケ浦北浦海区ワカサギ資源回復計画の内容とその推進状況について』
fig.05 茨城県霞ケ浦北浦水産事務所武士和良さんの『霞ケ浦北浦海区ワカサギ資源回復計画の内容とその推進状況について』

長野県水産試験場諏訪支場の川之辺素一さんは、『諏訪湖におけるワカサギ調査』を報告された。
諏訪湖のワカサギは、漁業者・遊漁者に利用されるだけでなく、ワカサギ受精卵は全国に出荷されており、 毎年安定した漁獲量・採卵量を確保するための資源管理型漁業の確立を目的とした諸策をご紹介頂いた。
採卵不漁の原因のひとつと推測された、遊漁による資源量の減少について、12月の湖内資源量に対する釣獲量は 2005年で3.4%・2006年は8.6%と推定された。
一方、採卵不漁の原因にもうひとつ挙げられた、湖内における産卵状況については、諏訪湖沿岸を探索し、定量&定性的に ワカサギ卵が確認された。
しかし、流入河川における産卵規模に及ばず、湖内産卵は行われているものの、遡上河川の採卵不漁の原因となる ほどではないものと考えられた、と説明された。
なぜ、遡上しないのか、依然として原因は不明である。
fig.06 長野県水産試験場諏訪支場川之辺素一さんの
『諏訪湖におけるワカサギ調査』
fig.06 長野県水産試験場諏訪支場川之辺素一さんの『諏訪湖におけるワカサギ調査』

芦之湖漁業協同組合大場基夫組合長と橘川宗彦事務局長は、『芦ノ湖の概要と漁業について』を報告された。
ワカサギについては、1918(大正07)年霞ケ浦産受精卵が移殖放流されて以来、 各地からの移殖卵ふ化放流による増殖事業が展開され、多い年には10億粒を超えたこともあった。
最近は、大場組合長自作の小型定置網による芦ノ湖産親魚の採捕と水槽内自然産卵法による自家採卵、また ふ化装置による集約的ふ化管理が考案され、毎年改善を重ねていると、概要が報告された。
fig.07 芦之湖漁業協同組合大場基夫組合長と橘川宗彦事務局長の『芦ノ湖の概要と漁業について』
fig.07 芦之湖漁業協同組合大場基夫組合長と橘川宗彦事務局長の『芦ノ湖の概要と漁業について』

芦之湖漁業協同組合橘川宗彦事務局長と大場基夫組合長は、『ワカサギ増殖の歴史と変遷−芦ノ湖』を報告された。
なかでも、現在実施されている、成熟親魚の採捕(小型定置網による生け捕り)・袋網後段上面に設けた開口部への 回収船上から手網差込による取り上げの容易化・回収船による運搬と収容の迅速化・親魚と産出卵の分離専用水槽の考案・ 東海大学工藤研究室の協力により実用化されたふ化装置等、随所に創意工夫の光る芦ノ湖方式を紹介頂いた。
2007年は03月02日より既に1億粒を採卵し、ふ化仔魚を順次放流と発表され、資源管理型漁業の ひとつの完成例を芦ノ湖に見た。
fig.08 総合討論も白熱
fig.08 総合討論も白熱(この場面の回答者は芦之湖漁業協同組合橘川宗彦事務局長)

続く総合討論では、
ヒメマスのいる湖にワカサギ卵1億粒を放流した場合、ワカサギの生残率はどの程度と考えるべきか(西湖漁協)。
プランクトンを増やすには、どのような方法があるか(西湖漁協)。
親魚の自然遡上による産卵について興味がある(桧原漁協)。
湖畔道路の凍結防止用塩カリ状のものが湖岸水中に堆積しているようだ(山中湖漁協)。
ワカサギの魚体が小さい理由は、なぜか(山中湖漁協)等の議論がなされた。

芦之湖漁協でワカサギふ化事業に関わる若いスタッフの話や、 初耳の話題も紹介される等、ワカサギ増殖に携わるよしさんにとって、大変有意義な2日間であった。

さらには、 教えを乞いながら(会う機会が持てず)直接お礼のできていなかった、芦之湖漁業協同組合橘川さん・ 群馬県水産試験場久下先生、ワカサギ受精卵確保でお世話になっている長野県水産試験場諏訪支場 川之辺さん・地元茨城県から参加の御三方に、最近のよしさんの調査・考察結果を差上げ、お礼と報告ができたことも嬉しい。
開催地でまとめ役にあたられ、何かとお世話になった、神奈川県水産技術センター内水面試験場の利波之徳さんに感謝したい。

次回、ワカサギに学ぶ会開催県は島根県である。

第13回ワカサギに学ぶ会:2007年03月14日〜15日 芦ノ湖(神奈川県箱根町)にて
発表:2007年03月19日 文字誤変換訂正:2008年01月08日 牛久沼漁業協同組合顧問よしさん
牛久沼漁業協同組合

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